それまで異性を意識することなんてなかった。女なんて、うるさくて、
面倒くさくて、泣き虫で、邪魔なだけだった。君に出会うまでは――。
あの夏休み、僕らは出会った。お互いを傷つけあうだけの、幼い恋だ
った。不器用に、手探りで愛した。愛なんてわからないのに。そんな
僕が、夏草が茂る操車場で、あの子に言われたベタ語。
『用例』
夕方、灯台で。サチはようやくイロをみつけた。
サチ:「探したよ……。こんなところにいたんだ。」
イロ:「………。」
サチ:「どうして本当のこといってくれなかったの?」
イロ:「言ったらお前が、傷ついちゃうだろ……。」
サチ:「そういう問題じゃないじゃん!」
イロ:「………。」
サチ:「じゃ、何で付き合おうなんて言ったのよ!」
涙をぽろぽろこぼしながら叫ぶサチ。濡れたほほに前髪がはりつく。
サチ:「何で付き合おうなんて言ったの!!」
(posted by イロ室長